あぁ、お母さんは強いな。


弱さを糧に、強く生きてる。



そんなお母さんの親友だった仁奈さんも、きっと心が美しくて、強かったんだろうな。




『ねぇ、幸珀。決していじめをしてはダメよ。いじめはね、時に人を殺すの。だから、誰かがいじめられていたら、助けてあげてね』



ぎゅっと私の幼い手を握り返したお母さんに、私は『うん』と頷いて、優しく約束を交わした。



『お母さんのように、後悔しないでね』



返事は、しなかった。



私は、ヒーローにはなれなかったけど。


悪役として、これからも助けていけるだろうか。




影が色濃く伸びていく。

夕日がやけに目に沁みた。




『でも、びっくりしたわ』


『何が?』


『授業参観とかの行事では遠くからしか見たことがなくて気づかなかったけど、幸珀の担任の先生がまさか……』


『まさか?』


『……まさか、仁奈をいじめていたクラスメイトだったなんて』