お母さんが、初めて、1人の少女に見えて。


一抹の沈黙の中、無意識にか細い声を振り絞っていた。



『仁奈さんは、どうなったの?』



無知な子どもの私だって、もう、答えに気づいていた。


血の気が引いたお母さんの手を、強く強く握り締めた。




『自殺したわ』




一瞬、呼吸がまともにできなかった。



『後悔してもしきれなかった。あたしにほんの少しでも勇気と強さがあったら、仁奈は今も生きていたかもしれない。あたしは、幸珀よりもずっと、弱かったの』



お母さんの頬を、透明な涙が流れる。



あたしが何もせずにいじめを放置していたら、Aくんもいじめに耐えられなくなって自殺していたかもしれない。


そう想像しただけで、ぞっとした。




『今でも、後悔してるわ。今でも、忘れられない。だけど、生きなくちゃいけない』


『それが、お母さんの償い……?』


『ええ、そうね。大切な親友の分まで生きて、幸せになれたら、空から見守ってる親友も喜んでくれる気がするの。ただの自己満足のようなものだけれど』