小学4年生の、冬の始まり。


クラス内のいじめが片付いた“あの日”。





私はお母さんと手を繋いで、帰り道をたどっていた。



『幸珀は、あの男の子を、いじめたの?』



いやに歯切れの悪い問い方だった。



お母さんには、真実を打ち明けよう。


不安にさせたくないもん。




『いじめてないよ。いじめてたのは、むしろあっち。私はそれを止めようとして、つい、殴っちゃった』



私って、強かったんだね。

強く、なっちゃったんだね。




下手くそな作り笑いは、お母さんにすぐに見抜かれた。



『不良だったお母さんが言っても説得力はないけど……不良の喧嘩じゃない、学校のいじめで暴力を振るってはいけないわ』



強がらないで、と慰められてるようだった。



この拳は、相手も拳を使うか、拳でねじ伏せなければならない相手ではないと、使ってはいけない。


“悪”って、大変だ。