ポツポツと、小雨が降ってきた。

辺りが陰っていく。



雨に逆らいながら、寂れた南の方角を進んでいく。


こちら側に踏み入れたのは、トラウマが刻まれたあの時以来だ。



居心地の悪さは、あまり感じなかった。





無我夢中に走ったおかげで、早々に廃校に到着した。


雨を吸収して重くなった気がするパーカーで、輪郭を伝う汗を拭う。



汚らしく錆びついている校門、神雷の洋館よりボロボロの外装、2階のとある教室の窓は割れていた。




「偽NINAがいなければいいのに」



ここに、ここだけには、いてほしくない。


トラウマが蘇りそうで、どうしても願ってしまう。




呼吸を整えながら、おずおずと廃校の敷地内に侵入した。


校門を過ぎ、校舎の周りを回る。



「あ、やっと来た」



横切ろうとしたグラウンドに、奴は、いた。