――そんな時。




「きゃっ」


「通行の邪魔なんだよ」



近くから、甲高い悲鳴と刺々しい声がした。



口論を一旦やめて、何事かと声のした方へと顔を向けると。


太った男にぶつかって後ろに転んでしまった、華奢な女の人がいた。



太った男と、そいつの隣にいる細身の男は、女の人にわざとらしくぶつかったくせに逆ギレしている。



うわ、ないわー。

あいつら、絶対モテないわ。


女に優しくできない男は、一生私のようなリア充にはなれないぞ?




「お嬢さん、大丈夫ですかー?」


「怪我とかしてないっすか?」


「は、はい。ありがとうございます」



いつの間に移動していたのか、弘也と剛が、転んでしまった女の人に紳士的に手を差し伸べていた。


太った男に怯えていたはずの女の人は、心なしかイケメンに助けてもらえて嬉しそうだ。



抜け目のない奴らだ。