『いじめてはいなくても、クラスメイトを殴ったのは本当なんでしょ?』


『うん』


『じゃあ、ちゃんと謝りなさい』



お母さんは、怒ってはいなかった。


ただただ、親として、私が今すべきことを諭していた。



私がか弱い女の子だったら、フツーの女の子だったら、Bくんは傷を負わなかっただろうし、いじめがここまで大ごとになることもなかった。



いじめていた奴も、いじめられていた奴も、見て見ぬフリをしていた奴も、私の左拳にも、責任はある。




『殴ってごめんなさい』




椅子から立ち上がって深々と頭を下げながら言った謝罪で、話し合いは幕を閉じた。


Bくんの母親はそれでも怒っていたが、右頬の治療代を支払うことで、一応表向きは納得してくれた。





そして、私は、お母さんと一緒に家に帰った。






年度終わりで委員会の活動があまり無かったので、委員長と2人で話したのは、相談した日きりになってしまった。




尾ひれがついた私の噂は最悪なもので、進級しても私だけ浮いていた。


居心地悪さを感じる度に、息苦しさに慣れていった自分を嘲笑った。