私は、ヒーローにはなれない。


ならば、残る選択肢はただひとつ。




――悪くなるしか、ない。





『おい』

『っ!』


私はBくんの胸ぐらを掴み、睨みつける。




『もう二度と、いじめなんてくだらないことするな』


『いじめじゃない。いじってただけだ!』


『また殴られたいの?』


『ひっ……!』


『また誰かをいじめたら、許さないから。わかった?』


『わ、わかった』




Bくんは顎を震わせながら返事をした。


胸ぐらを乱雑に解放し、Aくんの方に目を向ける。



『あんたも、いじめられてばかりいないで、嫌なら嫌ってはっきり言いなよ。情けないな』



あえてAくんにも、刺々しい注意を投げた。




クラスメイトがコソコソと、



『円堂さんひどくない?』


『暴力もひどかったけど、あんな言い方しなくても……』


『見損なったぜ』



と、陰口を言っていた。