『お、俺だって、殴ったりしなかったのに』



Bくんが鼻血を流しながら、かすれた声をこぼした。



は?殴ったりしなかった?

じゃあ、殴らなければ、何したっていいの?


責め立てたい気持ちをぐっと抑えて、正気に戻る。




『ご、ごめ……』


私は、Bくんに謝ろうと一歩近づいた。




だけど。

私を恐れて、ビクッと肩を持ち上げたBくんの右頬が、青く腫れ上がっていて。


無自覚に、足元に急ブレーキをかけていた。




その瞬間、私は初めて悟った。


自分の強さは、平均を遥かに超えた、異色の危うい力だということを。




周りから、私に対する恐怖心が直接伝染してくる。


助けようとしたAくんでさえ、私に怯えている。



私だけが、別世界にいるようだった。