私は、Aくんをいじめから救う、ヒーローになるんだ。



『離せっつってんだろ!?』



私の忠告に逆上したBくんは、持っていたほうきをブンブン振り回した。



私はBくんの腕を掴んでいた手で、こちらに襲いかかってきたほうきの柄を咄嗟に受け止めた。


ほうきの柄をグイッと自分の方に引き寄せて、Bくんの態勢を崩す。



そのまま流れに乗って、左拳でBくんの右頬をぶん殴った。




『キャーッ!!』


Bくんが腰を抜かして床にへたり込むと同時に、女子達の金切り声がはち切れんばかりに轟いた。



じんじん痛む左拳に瞳を落とした。




本能的に、反射的に、

私はBくんを殴ってしまっていた。




……違う、違う。

私は、Bくんの攻撃を止めようとしただけなんだ。


殴るつもりはなかったんだ。




ヒーローは矛にもなれる。




でも、私を見る周囲の濁った眼差しが、告げている。



私の矛はヒーローのソレとは違う、と。


私の矛は人を傷つけすぎだ、と。