どうしようもなく、嫌な予感がした。



「俺、見ちまったんだ」


「何を?」



それでも、平静を保った。

保つことしか、できなかった。



「路地で、新入りが自分のことを『私』とか『女だから』とか言ってるところを」



しん、と静まり返る。



「お前、本当は……」



鼓動が激しくなる。


心臓が飛び出してしまいそうだ。




「女、だったのか?」




桃太郎の色あせた眼差しが、私を貫く。



桃太郎の態度がおかしかったのは、私が女だってわかっちゃったからだったんだ。


男だと思っていた人が実は女だったら、そりゃあ動揺するよね。




さっきまでの静けさが嘘みたいに、周りがどよめき始める。



「幸珀が、女!?」


「まじかよ……」


「嘘だろ?」


「俺らを、騙してたのか?」



主に下っ端達のうろたえている声が、私をグサグサ突き刺した。