いつも無気力で動きたがらないのに、今日の副総長はなぜかこのケーキを切りたいらしい。



「凛さん、食べますか!?」


「あぁ」


「じゃあ今切りますねっ」



桃太郎が、私の手と副総長の手の間を縫って、ケーキナイフをさりげなく取った。


慣れた手つきでケーキを切り分けていく。



そうか、こういうのを「漁夫の利」と言うのか。覚えておこう。



「副総長って、アイスが好きなんじゃなかったっけ?」


「俺は、」


「凛さんは、アイスの次にチョコがお好きなんだよ!」



副総長の言葉を奪った桃太郎が、ドヤ顔をする。



副総長自身に、言わせてあげてもよかったんじゃないだろうか。


副総長がちょっとしょんぼりしてるように見えるのは、私だけ?



「だから、珍しく自ら行動してたんだ」



私がなるほどと呟けば、副総長はこくんと小さく頷いた。



アイスとチョコが好きって、相当な甘いもの好きなんだな。


私と気が合いそう。