そんな南棟で生きていたあたしが、北棟に移るのは異例なことらしく。

何度も担任には、考え直すように言われた。

だけど、あたしには北棟に行きたい明確な理由があった。

誰に何と言われようとも、揺らぐことはない。

だからあたしは、気持ちが変わらないことを伝え続けた。

そして、今日。

あたしは待ちに待った、北棟への一歩を踏み出す。


「やっほー、レイちゃん」


下駄箱に寄りかかり、人の名を呼ぶ彼は北棟に通う生徒の1人だ。


「おはよう。ハル」


挨拶をすれば、彼、ハルは優しい笑みをくれた。


「おはよ。同じ棟に通う前に、話しておきたい事があって」


そう言い、ハルはこちらへと近寄る。