そんな話をしていると、あたし達の横に1台の車が停まる。

知り合いなのか?千郷は慣れたように、車へと近づく。


「遅い!」

「わりぃ」


車の持ち主であろう、運転手から謝罪の言葉が聞こえてくる。


「結構、歩いたんだけど!」


千郷が言う程、大して歩いてはいないけど・・・


「中々、抜けられなかったんだよ」

「もう!!」


膨れながら、千郷は車のドアを開ける。


「蓮見も乗って」


そう言い、千郷はあたしの腕を引く。

その勢いに押され、あたしも車に足を踏み入れた。


「よぉ!久しぶりだな、蓮見」


こちらを見ながら、運転手は軽く手を上げた。

彼は、綾野晃一(こういち)。

千郷の兄だ。