くるくると回るジェーンブルン宮殿を見ていたら、ショウヘイと宮殿の庭園を歩いた時に見た青い空を思い出した。

離婚したて左遷決定直後の彼は、私みたいな失恋三十路女を自分の部屋に泊める羽目になって、どう思ってたんだろう。

サイテーだったはずなのに、ご飯をご馳走してくれたり、シェーンブルン宮殿観光につれて行ってくれたんだよね。

あの時はわからなかったけど、相当優しくて心の広い奴だった。

多分。

いや、きっと。

私もあの青い空の下を二人で歩いている時から、気になり始めていた。

ショウヘイのこと。


「うまくいくといいね。オーストリアの君と。」

トモエはじっとオルゴールを見つめている私を頬杖をつきながら見つめていた。

オーストリアの君、ね。

なんだか格好いい言い方。

私は苦笑しながら、頷いた。


喫茶店を出て地下を上がると、まだ外は雨だった。

「雨の日の空の色は嫌い。」

トモエは、空を見上げて言った。

曇天の空の色がトモエの瞳に映っている。

さっきから、妙に沈んだ瞳のトモエが気になっていた。

何か、あるんだろうか。

それとも、やっぱりまだ精神的な疲れが残ってるんだろうか。

素敵な出会いがあっても、解消されないもの。

皆、私みたいに単純じゃないってこと。

トモエの様子が少し気になりながらも、あまり遅くなれないと言うトモエと「また近いうちにね。」と別れた。