「じゃ、これからもお付き合い続けるの?」

トモエは微笑みながらコーヒーを飲んだ。

「・・・そっかぁ。」

その微笑みが全てを物語ってるような気がした。

トモエも、いよいよ幸せの鐘を鳴らす日が近いのかもしれない。

マキも、新しい恋が始まりそうな感じだったし、ミユキも忘れられないくらい愛した彼がいるし。

皆、なんだかんだいって幸せだ。

私だけが、なんだか宙ぶらりん。

この年で何の手応えもないショウヘイに恋をしている。

これも、他力本願な自分が蒔いた種なのかもしれない。

ホットケーキの最後の一切れを口に放り込んだ。

「チサ。」

「ん?」

「きっと幸せになれるよ。」

「私?」

「うん。幸せになってもらわなきゃ、私も安心できない。」

「何よ、それどういうこと?」

「とにかく、チサは幸せになるべき人だと思ってる。だからなれるよ、きっと。」

トモエは、微笑んでいた。

だけど、なんとなくその微笑みに違和感を覚えた。

私はトモエに頷くと答えた。

「幸せになるわ。多分。」

「多分じゃなくて、絶対によ。」

「わかったってぇ。なんだかトモエ、変だよー。くどいくどい。」

トモエは「ごめん。」と言いながら、自分の鞄の奧に手を入れて何かを探していた。

「忘れるとこだったわ。はいこれ、私の貴重な一人旅のお土産。」

シックな包み紙に包まれた小さな箱が、ちょこんとテーブルの上に置かれた。

「見てもいい?」

「もちろん。」

私はそっと包みを開けた。

小さな箱の中身はオルゴールだった。

オルゴールの上には、シェーンブルン宮殿が乗っかっている。

「ごめん、こんなお土産で。でも、シェーンブルン宮殿、とってもきれいだったの。オルゴール曲もどこか懐かしいメロディで気に入っちゃって。」

ねじを巻くと、どこかで聞いたことのあるメロディーが流れ、シェーンブルン宮殿がゆっくりと回り始めた。