恋、ねぇ・・・。

ふと、ショウヘイの重なった柔らかい唇を思い出す。

胸がきゅーっと痛くなった。

「あら、何想像して赤くなってんの?」

マキがニヤニヤしながら、私の腕を押した。

「赤くなんかなってないわよ。」

「まさか、こないだ話してた澤村ショウヘイじゃぁないでしょうね?」

「ま、まさか!」

思わず声が大きくなる。

「でもねぇ、結構あるのよぉ。好きになっちゃいけないって思えば思うほど、気持ちが止められないっていうの。」

「馬鹿言わないで、ドラマじゃあるまいし。」

「まぁ、違うならいいけど。また澤村情報ゲットしたんだけど、彼に恋してないなら教えてあげる。」

恋してないなら教えてあげるって、また聞きたくないような情報なの?

胸が緊張でドキドキしていた。

「彼の離婚の理由、浮気だって。」

そうよ、彼も彼女の浮気って言ってた。

知ってる情報だったから少しホッとする。

「知ってた?澤村って男、かなりのモテ男で、結婚後もぶいぶい言わしてたらしいのよー。案の定、彼の浮気がひどくて奥さんが愛想つかしたんだって。」

「嘘。」

「え?今、嘘って言った?チサは何か知ってるの?」

しまった。

思わず口を滑らせた。

でも、ショウヘイから聞いてた話と違うんだもん。

ショウヘイは彼女の浮気が原因だって。

どっちが本当なの??

ショウヘイのキスは、ひょっとしてモテ男ならではの軽はずみな行動だったの?

じゃ、完全に私、気持ちを弄ばれてるってこと?

体中の力がすーっと抜けていくようだった。

今陶芸で茶碗作れって言われたら、間違いなくぐちゃぐちゃのがちがちな作品になると思うっていうくらいに。