「先生、私、生活厳しくても全然大丈夫よ。働いてるし、そこそこ貯金もあるから。」

マキはそう言うと、またろくろを回し始めた。

まじで言ってんのか、先生をおちょくってんのか。

そんなマキを横目にくすりと笑った。

「そうか、そこそこ貯金あるんなら、困った時は助けてもらえるかな。」

先生も笑った。

明らかに冗談だとわかる口調で。

「おや、隣の君もなかなか素敵な作品だね。」

この先生は褒め上手だ。

「優しくて素直なラインを描いてる。仕上がりが楽しみだな。」

「ありがとうございます。」

素直に伝えた。

陶芸も何度かやったことあるけど、今回は我ながらなかなかバランスのいい形になったと思っていた。

「君はいい恋してるんじゃない?」

先生が私の作品に目を近づけて言った。

いい恋?!

そんなことがこの作品でわかるもんなの?

「へー、先生、その人の作品みて恋してるかどうかもわかっちゃうんだ。」

マキがちゃかした。

「恋をしてる人の作品って、なぜだか曲線が美しいものが多いんだ。優しくて柔らかでなめらかでね。君はそれがとても美しく出ている。」

思わず顔が熱くなった。

「チサ、恋してるんだー。」

マキが私の腕を肘でつついた。

否定できないのが情けない。

「先生の作品は、曲線多いの?」

マキは先生を見上げて無邪気に尋ねた。

「僕の作品は、残念ながら最近角張ったがちがちの作品しか作ってない。」

「じゃ、今日私と出会ったから曲線がきれいな作品作れるようになるわよ。」

マキはいたずらっぽく笑った。

マキという人は、どうしてこうも、素直に自分の気持ちを伝えられるんだろう。

って、もう男はこりごりだなんて言ってたくせに!

こういう奴に限って、誰よりも早く「結婚しまーす!」なんて言いかねない。

ま、その時は盛大にお祝いしてあげるけどね。