その目に一瞬たじろぐ。

って、なんでそんなこと言っちゃったんだろ、私。

これしきのビールで酔うはずないのに。

ええい!どうにでもなれ!

ここまで来た以上、この失礼極まりないショウヘイに向かって一気に捲し立てる決意をする。

「問題にしてないなんて言いながら、オーストリアでは自分の希望してない部署に配属されるから頭ん中リセットしたいだとか、結婚を夢見てる私にむかって『結婚なんてくだらない』だとか『監禁事件と一緒』だとか、今思えば男のくせにくだらない愚痴ばっかこぼしてたじゃない。本当に、気にしてないなら、リセットなんかする必要ないし、結婚のことをそんなに否定することもないんじゃない?」

ショウヘイの顔をちらっと見たら、じっと手元のコーヒーを見つめていた。

わわわ、私かなりひどいこと言ってる?!

「それに今だって、『だから振られるんだ』なんて、人には失礼なこと言うくせに、自分が言われたら『君には言われたくない』だなんて、都合のいいことばっか言って。確かに私も余計なこと言ったかもしれないけど、その前にふっかけたのはあなただわ。」

一気に吐き出して、息が上がっていた。

こんなにも誰かにぶちまけたのって初めてかもしれない。

タカシにですら、捨て台詞にここまで言えなかった。

たぶん、完全にショウヘイに嫌われた。

同じ部署だからやりにくくなるかもしれない。

オーストリアでお世話になったお礼も、できなくなるかもしれない・・・。

どれくらいの時間が経ったんだろう。

時計の秒針を刻む音が静かなフロアに響いていた。

「・・・確かに、」

ショウヘイが手元を見つめながら、口を開いた。