後悔よりも、喉がからからだった。

缶をプシューと空けて、「ありがとうございます。」と彼に一礼してすぐに口をつけた。

うわー。おいしい。

「君は本当に美味しそうに飲むよね。」

ショウヘイはちらっと私を見て、缶を空けた。

いつぞやの夜を思い出して、顔が熱くなる。

しばらくの沈黙。

「・・・で、火災は大丈夫だったの?」

「ああ。俺の乗る1本前の車両で火災があったみたいで。しばらく構内はパニック状態だったよ。」

「電話の一本くらいかけてくれたらよかったのに。そしたらこんな待ちぼうけ食らうことなかったのに。」

「申し訳ない。実は携帯の充電が切れちゃって。電話もかけられない状況だったんだ。ここに来るまでにこんなに時間かかるとも思わなかったし。」

「そうだったのね。」

素直に謝るショウヘイが、いつもと違って新鮮に見えた。

その横で、無事に帰ってきてくれてよかったと思いながら素直に言えない自分がいる。

「ところで、会場では皆への挨拶とかはしたの?岩村課長、そこをすごく気にしてたみたいだったけど。」

「とりあえず、俺が到着したのを待ってくれてたみたいで、すぐに挨拶させられたよ。岩村課長にも迷惑かけて申し訳なかったな。」

「間に合ってよかったわ。今、会場はどんな感じなのかしら?ゆっくり食べてる時間はない?」

ショウヘイは私の顔をきょとんとした表情で見つめた。

な、何よ。

「もうお開きになりましたよ。だから、課長にこの料理ここに持ってけって。」

「え?今何時?もうそんな時間なの?」

慌てて、お茶室にかかってる時計を見上げた。

時計は22時を指していた。

嘘でしょう?もうそんな時間経っちゃってたの?

一時間くらいしか経ってないかと思ってたのに!

待ちぼうけしてる間にうつらうつらしてたから時間の感覚がにぶってたんだわ。

そりゃお腹も減るわよ。

岩村課長もひどいじゃない?あの後、電話一本もよこさないだなんて!