ミユキはビールを一口飲んで続けた。

「だけど、もしこれから先、また彼とばったり出会って、また寄り添うようになって、両親や周りの人達からも認められるようなことがあったときは、絶対彼と結婚します。まだその夢は捨て切れてないんですよ。」

そっか。

まだ彼をあきらめてないんだ。

だからこんなにも潔い。

ミユキの横顔がキラキラして見えた。

「私もそんな恋してみたいわ。」

ため息まじりにつぶやいた。

「え?ずっと付き合ってた彼氏いるじゃないですか?」

ミユキは目を丸くして私を見た。

ここまできたら、言わない訳にはいかないか。

「実はさ、こないだ私の誕生日の日に、振られちゃった。」

「そんな・・・。」

ミユキは我が事のように悲しそうな目をした。

「どうして、誕生日なんかにそんなひどいこと言うんでしょ。」

「そうよねー。もう結婚を決めた相手までいたのよ。」

さすがにできちゃった婚とは、情けなくて言えなかった。

言いながら、久しぶりにタカシのこと思い出してる自分にも少し驚いていた。

「チサ先輩!別れて正解です!彼女がいながら、別の相手と結婚まで考えてるなんて、この先一緒になったってそんな人とは幸せになれっこないですもん。」

ミユキは私の心を代弁するかのように怒ってくれた。

「そうだよね。私も今はそう思う。結婚前にそういう相手だってわかってよかったって。」

「そうですよ!きっと、チサ先輩にはもっとふさわしい男性が現れるはずです。」

「だといいんだけどねぇ。」

そこを言われると急に自信がなくなっていく。

そんな相手、この30年生きてきて出会わなかったわけで。

この先も出会う確率はどれくらいなんだろう?