「結婚してました。付き合ってる途中までは。」

「嘘。」

思わず焼き鳥に伸ばした手を引っ込めた。

「知ってたの?結婚してたって。」

「もちろん。」

「彼の家までこっそり見に行ったこともありました。ストーカーですよね?」

ミユキは明るく笑った。

「でも、結局私と付き合うようになって1年くらいして、本気で結婚しようってお互い話して、彼は離婚したんです。」

「離婚?」

させちゃったんだ・・・。

思わず目を見開いて、まだあどけなさが残るミユキの横顔を見つめた。

「でも、私の両親に反対されて。結婚するなら家出ていけーまで言われちゃって。さすがに彼もそこまで私を傷付けたくないって、別れたんです。」

「その彼、大人だね。」

っていうか、40もいってたらもう十分大人か。

「で、今その彼はどうしてるの?」

「結局、高校教師は辞めて、塾の講師やってるって友達から聞きました。」

「そうなんだ。」

「びっくりしたでしょ?私みたいなのがそんな恋愛してただなんて。」

「うん。正直。」

「人って見かけによらないんですよー。」

「その後に付き合ったのが、今の彼?」

ミユキは笑いながら首を横に振った。

「彼と別れてから、しばらくの間自暴自棄になっちゃって、複数の男性と付き合いました。でも、どんな男性と付き合っても、彼以上の人はいなくて。彼だけだった。結婚したいって思えたの。」

結婚したいって思える相手がその彼だけって。

私なんか付き合う度に、結婚まで考えるのに。

なんだろう?

ミユキの結婚したいっていうのと、自分の結婚したいっていうのは、別次元のもののような気がした。