じっと押し黙っている私の顔をのぞき込んだマキが、

「ちょっとショックだったりする?」

と真面目な顔で聞いてきた。

ショック・・・っちゃぁ、ちょっとショック。

だけど、別にショック受ける間柄でもなきゃ、ショウヘイに恋してるわけでもない。

これから恋する予定も、・・・ないはずで。

何て返答したら怪しまれないか考えていたら、

「チサの結婚相手になる可能性がゼロとは言い切れなかったもんね。」

なんて、マキがサクッと言った。

結婚相手。

結婚相手?

いやいや、奴に限っては。

だけど、それはゼロではない。

ゼロっていう可能性は絶対ではないわけで。


『結婚?くだらない。』

ふいに彼が冷たく言い放った言葉が耳の奧でこだました。

そうか。

そうだったんだ。

ショウヘイは離婚したばかりだったから、結婚にはまるで興味がなかったし、その願望もなかったんだ。

やっぱ、奴との結婚の可能性はゼロだ。

彼は全く結婚する意思がないんだもの。

「ショックでもなんでもないわ。私はバツイチお断りだもん。」

口紅を塗り直していたマキが私の方にチラッと視線を上げた。

「そうだよねぇ。そりゃそうだ。まだ30だもん。初婚の男性なんかいくらだって探せばいるわ。」

マキは濃い目に塗った唇の口角を上げてにんまり笑った。

私も自分に言い聞かせるように、うんうんと何度も頷いて口紅を塗る。

「ま、澤村のことはいいわ。とりあえず、来週の陶芸、また付き合わせちゃうけどよろしくね。」

「ほんと、『また』だけど、いいよ。楽しみにしてるわ。」

マキは私の言った『また』に反応して笑った。