「それはそうと、どうよ?澤村って人。」

マキは私に顔をぐっと近づけて聞いてきた。

な、何?いきなり。

「え、まぁ、がんばってんじゃないの?」

「オーストリアの彼ではなかった?」

うわ。

嘘が苦手な私は、マキのこの大きなキラキラした目が時に苦手だ。

「んなわけないじゃん。」

マキから視線を外すと、口をとがらせて言った。

「・・・。」

どうして黙ってるのよ!

ちらっとマキを見ると、その大きな目でじっと私を詮索するように見つめている。

「だから、何?そんな奇跡みたいな偶然、普通考えてもあるわけないでしょ。全然知らない人だったわよ。澤村って人は。」

ありったけの平静を装って言った。

「そう?それは残念。」

「そうよ、残念だわ。」

ようやくマキの視線が私から外れた。

ふぅ。

なんとか切り抜けた。

「じゃ、いいかなぁ。言っちゃっても。澤村直近情報入手したのよねぇ。」

え?直近情報?

思わずマキの顔を見た。

「おっと、気になる?」

マキはニヤニヤ笑った。

「別に。ただ、同僚の情報で私も知っておくべき内容もあるじゃない?そういうんだったら知りたいなって思っただけ。」

「そうねぇ。知っといた方がいいのかなぁ。」

マキは私の腹の底を試そうとするかのごとくじらした。

「知らなくたっていいわよ。」

思わず、ぷいと横を向いた。

でも、すごく気になる。

どういう情報??人事部に異動になった発端とか?

「チサは私と違って結婚願望が強いし、これから先、身近な男性に恋する可能性だってあるわけだもんね。」

「だから何よ。」

「チサが澤村のこと好きになる可能性だってあるってこと。」

思わず顔が熱くなった。

なんで熱くなるのよ!

思わず頬を両手で押さえた。

「うわ、赤くなってる-!それってもう既に惚れちゃった?イケメンらしいもんねぇ、澤村って人。」

マキが私を指刺して笑った。