「やっぱりなぁ!大体ねぇ、怪しいと思ってたのよ。」

翌日のランチタイム。

マキがお弁当に入ってたソーセージを口に放り込みながら語気を強めて言った。

同期の山口マキ。

私と同じ30歳。独身、彼氏なし。

「付き合って結婚までは、いくら長くたって4年までだって。私のデーターから言わせてもらうと。」

「そのデーターってどっからのデーターよ。」

「男友達ぃ。」

マキは得意気な顔をして、ゆるやかなパーマのかかった前髪を掻き上げた。

彼氏はとっかえひっかえ。もって一年のマキだけど、どうやら男友達は複数いるらしく(まぁ飲み友達って感じ?)、そんな男友達からの様々な恋愛情報を勝手に分析して誇らしげに教えてくれる。

それなりに説得力のあるデーターだった。

「結局、付き合いが長くてお互いの関係がマンネリ化しちゃうと、他に目移りしちゃうもんなのよ。チサの場合はまさにその典型。」

マキの話は完全に私の傷心を度外視してくれてる。

ここまで派手な振られ方をしていると、変に同情されるよりは、これくらいはっきりと客観的なデータでもって頭を一発殴ってもらう方がありがたい。

うじうじめそめそしてる時間は私にはないんだ。

早く正気に戻って、次探さなきゃ、次。

「世の中そんな男ばっかだから、私も結婚に夢を持てなくなっちゃったんだ。1人で生きて行く道を探る方がずっと有効的且つ現実的だわ。」

マキはそう言いながら卵焼きにぱくっとかぶりついた。

そう。

マキにはもう結婚願望はないらしい。

あれだけの男友達をはべらかして、スタイルもよくそれなりの美人でモテるのに。

マキくらいのレベルで、結婚しないという選択をしちゃうのはなんだかもったいない。

もう結婚しないんだったら、せめてマキの外見と私の外見を交換してもらいたいくらいだ。