呆然と立ちつくしていると、会議室の扉が再び開いて岩村課長の顔がひょっこり出てきた。

「いいとこにいたいた、村上さん。ちょっと入って。」

ち、ちょっと入って??

心臓が爆発しそうなほどにドキドキしていた。

まさかこんな形で再会するなんて、しかもこんな早くに。

こういう突発的状況に弱い私は、すぐに会議室に入ることができなかった。

そこへ、ミユキが部屋のお茶を下げにお盆を持ってやってきた。

「あれ?チサ先輩、まだここにいたんですか?」

「え?いや、まぁ。今岩村課長から中に入ってって言われて。」

「入らないんですか?」

ミユキはあっさりとその扉を開けて、「はい、お先にどうぞ。」と笑顔で私に向かって言った。

「あ、ありがと。」

ミユキの笑顔の前をゆっくり通り過ぎて、扉を抜けた。

さっきまでぎゅうぎゅう詰めだった会議室はがらんと広く、窓から朝日が差し込んでいた。

前の方に、岩村課長と山田さん、そして澤村ショウエイが談笑している。

ミユキがお盆を持って私の後から中に入ってきた。

バタン。

扉の閉まる音。

一斉に前の三人が私達の方に視線を向けた。

思わずうつむく。

「きたきた、何やってるの、早くこっちきて村上さん。」

岩村課長が手招きしている。

澤村ショウヘイの顔を見るのがなぜだか恐くて見れない。

ようやく三人の前に立つ。もちろん岩村課長オンリーしか視界に入れていない。

「こちらが教育課のベテラン女史、村上チサさん。人事部フロアの説明は、村上さんから指導してもらってくれ。村上さん、頼むよ。これから、ほらお茶飲む場所とか、ファイルが入ってる場所とか、コピー機の使い方だとか細々したこと教えてやってくれ。」

「・・・はい。」

ショウヘイは、一体私をどんな顔して見てるんだろう。