「本日付で教育課に配属されました、澤村ショウヘイです。」

ミユキと澤村という人の声が重なった。

イケメンの方じゃん!!

「営業部からの配属ということもあり、初心に返ったつもりでがんばります。ご指導よろしくお願いします。」

透き通るようなすがすがしい声が響いている。

さすが営業マンらしく、きびきびとした物言いに、人事部スタッフ達も一瞬ざわついた。

で、私は、そのイケメンの顔が見たいんですけど!

必死に背伸びをする。

「チサ先輩、ほら、ここから見えますよ。」

後ろからミユキが私の腕をつかんで右側にスライドした。

ほんとだ。

ここからなら前でしゃべってる姿がすっきりと見える。

すっきりと・・・




え。



小太りの山田さんの横に立っている澤村ショウヘイという人は。



いや、まさかね。

二日酔いのせい?

思わず目をごしごしとこすった。

もう一度、目を細めて前を見直す。


澤村ショウヘイ。

その姿は、紛れもなくあのオーストリアで5日間一緒のホテルに泊めてもらった奴だった。

「ね、イケメンでしょ?よかったですね、教育課で。」

ミユキが私の肩をポンポンと嬉しそうに叩いた。

「とういうことで、山田くんは労務課、澤村くんは教育課だ。よろしく頼む。皆、もう仕事に戻ってくれ。」

岩村課長の声が遠くで聞こえる。

扉から皆に押し出されるように外に流れ出た。

廊下で立ちつくす。

状況がつかめない。

これは。

これは?

マキの言ってたことが、一万分の一以下の確率で起こったってこと?