「せっかくだから宮殿の中に入ろう。」

私は少し興奮気味に頷いた。

中も嘘みたいに広くて、美しい工芸品や家具や絵画が置いてあった。

こんな場所で生活するって、どんな感じなんだろう。

私みたいな貧乏症には全く落ち着かない空間だろうな。

彼は各部屋を回りながら、私にわかりやすく説明してくれた。

淀みなく、迷いない解説に感心する。

「すごい詳しいよね。あなたはこの場所に何度も来てるの?」

「俺のお薦めの場所だって言ったろ。もちろん何度も来てるさ。」

「どこがお薦めなの?」

「こんな華やかな美しい宮殿は見たことがない。かなり歴史ある建築物の割に現代にも通ずるモダンさが共有してるところ。あとは、あの広大な庭園かな。」

「庭園ね・・・確かに。」

窓の向こうに見える庭園を見つめる彼の目は少し寂しそうに見えた。

「後で、庭園の端まで歩いてもいい?」

その横顔に言った。

「ああ、いいよ。相当、時間かかるけど。俺も庭園は久しぶりだから行ってみたいと思ってた。」

「よかった。」

私は大きく頷いた。