その時、シャワーの音が止んだ。

ガチャッ。

シャワールームの扉が開く。

タオルで頭を拭いてるんだろうか。

カサカサとしたタオルがこすれる音と、スリッパのぺたぺたという足音が近づいてくる。

ドキドキがピークになる。

こんなに緊張しなくてもいいのに。

体が硬くなった。ぎゅっと目をつむる。

彼の足音は私のベッドの前で止まった。

ちゃんと寝てるのか、確認しにきたんだろうか。

早く、どっか行って!!

これ以上、寝たふりするのは難しい状況だった。

息をぐっと止めてる。

変だよね。

寝てるなら呼吸はしてるはずだもん。

だけど、なぜだかシャワー上がりの彼が枕元に立ってるっていう状況は、私を極度に緊張させていた。

ようやく彼は私のベッドから離れて行った。

体の力がようやくほどけていく。よかった。

私の隣に置いてある簡易ベッドがきしむ音がする。

彼の「ふぅーっ。」という長いため息が聞こえた。

きっと彼も疲れてるんだろう。

置き引きに遭った見ず知らずの女性を助け、食事をさせて、自分の部屋に泊めるはめになっちゃってるんだもの。

しかもその女性はすっかり酔いつぶれて寝てる始末。

きっとえらいものを引き受けちゃったなぁなんて思ってついたため息だと思った。

部屋に備え付けの冷蔵庫が開く音がする。

ビールだろうか?

缶の開けられる「プシュー」という音が暗闇に響いた。

暗闇を照らすのはシャワールームの黄色い明かりだけ。