彼の腕に体を預けながら、なんとかホテルまでの道のりを歩いた。

体はふにゃふにゃだったけど、意識ははっきりしていた。

ホテルの部屋に入って、彼はゆっくりと私をベッドに座らせた。

「ありがとうございました。」

そう言いながら、顔を洗いに洗面所に向かおうとしたら、足がからまって床に倒れた。

「今日はもうこのまま寝たら?」

彼がまた手をさしのべてくれた。

いいお年頃の女性が顔も歯も磨かないまま、男性と一緒の部屋に泊まるだなんて。

いくら赤の他人とは言え、情けなさ過ぎる。

だけど、このまま介助なしで洗面所まで行くのは難しそうだった。

これ以上、彼の手を煩わせるのは気がひけた。

「そうした方がよさそうですね。」と返事をして靴下を脱いで、そのままゆっくりと布団の中に潜り込んだ。

相当疲れていたのか、潜り込んだ途端、意識が遠くなりそのまま寝てしまった。

どれくらい寝ていたのかわからない。

ふとシャワーの音で目が覚めた。

部屋の明かりは消されていたけど、シャワールームの方からわずかに黄色い光が漏れていた。

きっと彼がシャワーを浴びてるんだろう。

そう思ったら、急に眠気が去っていく。

なんだろう。

ドキドキしていた。

シャワーをしてる彼の姿を想像したからという訳ではなく、今更ながら今日初めて出会った彼と同じ部屋で泊まっいることに緊張してきた。

しかも、朝まで目が覚めず寝れればいいものを、変なタイミングで目が覚めてしまった。

寝れない焦りが更に自分の感覚を覚醒させる。