「新しい仕事で俺が自信もてるようになったら、お前を迎えに行こうって決めてた。」

心臓が止まりそうだった。

嘘でしょ。

体中がドクドクいってる。

「あなたはもう結婚はこりごりなんじゃなかった?」

胸が詰まる。

涙が出そうなのを必死に堪えながら言った。

「あの時は確かにね。だけど、そんな俺の結婚概念を君は変えてくれた。ずっとそばにいたらおもしろいだろうなって思える相手に出会えたから。これから先の人生、お前となら一緒に生きていけるって思ったんだ。」

ショウヘイは、すっと私を抱きしめた。

温かくて大きな体の中にすっぽりと収まる。

ずっと触れたかったショウヘイの大きな胸の中。

こんなにも心地のいい場所があったんだ。

「お前の結婚適齢期は少し過ぎちゃうかもしれないけど。それまで待っててくれる?」

ショウヘイが私の耳元でささやいた。

「適齢期は、結婚したい人と結婚できる時だと思うわ。」

「チサも変わったな。」

ショウヘイは笑う。

私も笑った。

笑う私を、ショウヘイはぎゅっと自分に引き寄せた。

「俺のこと信じてついて来てほしい。」

「うん。」

どんな状況だったとしても、ショウヘイじゃなきゃだめなんだ。

ショウヘイの顔が私の顔に触れそうなくらい近い。

「チサ、好きだよ。」

「私も。」

ようやく言えた自分の気持ちにホッとして、思わず涙がこぼれた。

シェーンブルンの風が木の葉を巻き込みながら、私達の周りをくるくると踊っている。

ショウヘイの唇が私の唇を優しく塞いだ。

会えなかった時間を取り戻すような長くて甘いキスだった。

「もうどんなことがあっても離さないから。」

そう言うと再び私を強く抱きしめた。


私の結婚適齢期は、ショウヘイと一緒になる時。

今は迷いなくそう言える。

「行こうか。」

「うん。」

私達は立ち上がり、手を繋いで庭園の方へ歩き出した。

太陽はいつの間にか高く昇っている。

ずっと一緒にいよう。

どんなことがあっても。

あなたとなら。


・・・END