思わず足が止まる。

ショウヘイのことリセットするためにここに来たのに。

神様、どうして?

ゴクゴクとペットボトルの水を飲む横顔を見ながらどうすればいいのか考えた。

飲み終えたショウヘイは、再びナップサックにボトルを直し、そのままナップサックを肩にかけた。

「足下に荷物なんか置いてたら置き引きに遭うわよ。」

思わず口をついて出て来た言葉。

庭に視線を向けていたショウヘイが一瞬固まる。

そして、ゆっくりと、とてもゆっくりと私の方に顔を向けた。

いつもクールなショウヘイの表情がわずかに動いた。

「・・・まじかよ。」

少し開かれた口がそう言った。

「お前、どうしてここにいるんだよ。」

ショウヘイの背中にはさっきより少しだけ高く上った日差しがまともに当たっていた。

「あなたこそ。」

「俺は、出張で来た。」

「出張?」

あんなにも恋しい人が今目の前にいる。

夢を見ているようだった。

でも言葉を交わす度に、会えなかった時間と距離が信じられない速さで縮まっていく。

「お前、今時間あるか?朝ご飯は食べた?」

「まだよ。」

「俺もだ。話の前に、サンドイッチでも買ってきてまずは腹ごしらえしないか。」

「私もそう思ってた。」

ショウヘイには伝えたいことがたくさんある。

だから、落ち着いて話せる場所に行きたかった。

宮殿を出てすぐのところにカフェがあり、コーヒーとサンドイッチをテイクアウトする。

相変わらず慣れた様子で私の分も頼んでくれた。

そして、また庭園のベンチに二人で向かった。

ショウヘイも私も緊張のせいか、しばらく何もしゃべらないまま正面を向いて歩いた。

だって、あの日以来だもの。

顔を合わせてきちんと言葉を交わしたのは。

中途半端なまま、随分時間が立ってしまった。

並んでベンチに腰を下ろした。

「元気だったか?」

コーヒーを飲みながらショウヘイが尋ねた。