「枯葉」を聴きながら目をそっとつむると、シェーンブルン宮殿が静かに回る情景が頭に浮かぶ。

深みのあるウッドベースが足から胸に伝わってくる。

温かい音。

あの時の青い空と、ショウヘイのがっしりとした腕。

気持ちのいい風と木々のこすれる音。


もう一度、あの場所に行きたい。

ショウヘイと出会ったウィーンへ。

自分の傷心を癒すには、あの場所しかないと思った。

ショウヘイが染みついた自分をきちんとリセットするために。

目を開けると、マキの横顔が見えた。

「もう一度、オーストリアへ行ってこようかな。」

マキが軽くリズムをとりながら、私に微笑んだ。

「いいんじゃない?海外は一番刺激があって過去をリセットできる。」

「同じようなこと、1年前にも言わなかったっけ。」

「言ったかも。」

マキは前髪をふわっと掻き上げた。

今月は仕事が忙しいから無理だけど、来月なら1週間ほどお休みが取れそう。

早く行きたい。

ウィーンの風に呼ばれてるようなそんな気持ちになっていた。