「私の占いでは、チサが彼に振られた後、海外に不思議な縁があるって出ててね。それで促したのもあるのよ。帰国後、澤村が人事部に異動になったって話を知人から聞いた時に頭にあなたと澤村が一緒にいるところが頭に浮かんでね。ビンゴ!って感じ。」

「嘘でしょ。信じられないんですけど。」

「まぁね。信じようが信じまいがどっちでもいいわ。」

「だけど、それにしてはえらくショウヘイ、いや澤村さんのこと毛嫌いしてなかった?」

マキは空になったグラスをテーブルに置くと、つまみのピーナツを口に放り込んだ。

「だって、澤村が所属してた営業部のある女子社員からやたら澤村の悪口聞いてたからね。しかもバツ一だっていうし、これは占い云々よりも、チサの将来を案じて一度は止めようと思ったの。だけど、運命の流れには逆らえないからね。人の噂よりもその人自身の運命の流れの方が強い力があるから。」

「運命?そんなの今は全く感じないわ。終わる運命もあるってことね。」

トリオの演奏が一旦終わった。

会場に拍手がわき起こる。

全然耳に入ってこなかった。

とりあえず、会場の雰囲気につられて拍手をした。

「それが続きがあって。」

マキは拍手もせずに私の目をしっかりと見つめた。

「私に情報をくれてた営業部の女子社員っていうのが、実はくせ者でね。これも後々わかったんだけど、どうも澤村が以前付き合ってた彼女らしいのよ。自分の昇進のために自分を捨てて結婚したなんて彼女はいい回ってたんだけど、実は、そんな話が出る以前に二人の関係はとっくに終わってたみたい。結果的に結婚話が浮上してそれをきっかけに彼女も完全に切られたみたいだけど。それが彼女のプライドをすごく傷付けたのね。まぁわからなくはないけど、その話を根も葉もない話をいっぱいくっ付けて色んな人間に言いまくるのはルール違反だわ。」

そうだったんだ。

ショウヘイの嫌な噂は全部彼女が発端だったんだ。

「あとね、その元彼女がついてた嘘の内容でチサに正さないといけないことがあるの。」

「何?」

妙に冷静な気持ちでマキの声を聞いていた。

「実はね、澤村は河野部長の娘と籍は入れてなかったらしいの。もちろん結婚話まで行ってたし、結婚に向けての準備も着々と進められてはいたみたいなんだけどね。結婚前に別れたわけだから、バツ一でもなんでもないの。ほんと、早まった情報教えちゃってごめん。」

マリは頭をペコリと下げた。

そうだったんだ。

そう。ショウヘイはバツ一じゃなかったんだ。

河野部長の娘とも、結婚前提にお付き合いしていただけだった。

だけど、今となってはそんなこと知ったところでどうしようもない。

それに。

どんな噂があろうと、私はショウヘイが好きだったし、信じてた。

例え、噂通りの人間だったとしても、ショウヘイのことを求めていた。