完全に着いていけなかった。

ショウヘイの挨拶の後、席に戻っても体も頭の中もふわふわしていた。

退職する?

もう会えなくなる?

ミユキが「驚きましたね-。まさか退職なんて!」って私の耳元で言ってたけど、思わず「何が?」って答えてしまった。

それくらい、着いて行けてなかった。

着いて行きたくないっていうのが本音だった。

想像できない。ショウヘイが目の前からいなくなるなんて。

翌朝、ショウヘイの机の上はまるで嘘みたいにきれいになっていた。

昨日までそこでパソコン打っていたのに。

存在までもが幻になっていく。

ショウヘイが退職という回章を見て、一層落ち込んだ。

回章が出回ったと同時に、マキからメールがあった。

『イケメン澤村氏、退職だって?チサは大丈夫?』

大丈夫なわけないし。

だけど、こんな風に言われるってことはやっぱりマキにも私の気持ちばれてたってこと??!

もういない状況で隠す必要もないか。

『私も自分のことばっかですっかり言い忘れてたことがあるんだけど、今晩空いてる?』

マキのメールはそう続いていた。

言い忘れてたことって、前に言ってた「話さないといけないこと」のこと??

夜、飲みに行く元気も正直なかった。

だけど、マキの言い忘れていたことがなんとなく気になっていた。

『空いてる。』

すぐに返信を打った。