私が作った茶碗は、渋い抹茶色をしていた。

「形は恋してるけど、色はメチャクチャふけすぎー」

って、マキは私の作品を見て笑った。

「そんなことないよ。とても落ち着いた美しい色をしてる。この曲線を引き立てるいい色だ。」

マキの意中の先生は真面目な顔をして言った。

「ありがとうございます。」

褒められて嫌な人間はいない。

だけど、マキの意中の先生が私の作品を褒めるとなると色々と気を遣うわけで。

マキは案の定嫉妬むき出しの表情で私の作品を見ていた。

ほんと正直。

「先生、私のは?」

マキはふわふわといい香りをさせながら、先生の前に自分の茶碗を置いた。

マキの作品は、細長い茶碗で濃い青色だった。

「ん。おしゃれだね。君みたいに。」

「私みたいにおしゃれ?形とか色について、チサみたいにもっと深いコメント下さい。」

マキはだだをこねる子供みたいに先生に食い下がった。

先生は苦笑しながらも、

「君は君らしい感性を大事にしたらいい。今度は、もっと大きな平皿を作ったらどう?個性が出ると思うよ。」

おおっ。

「今度は」ってことは、今度が期待できるってことじゃない。

やったね、マキ。

マキの顔を見ると、明らかに嬉しそうな顔で先生の横顔に釘付けだった。

はは。恋してるマキ。

私の怪しい行動なんて、もうすっかり忘れちゃってるだろう。

マキのせっかく取り付けたデートを邪魔しないよう、自分の茶碗をバッグにしまうと「お先に」と言って早めに教室を後にした。