「とにかく中に入ろう。」

ショウヘイは私をなだめるように、冷たい手で私の頬を包んだ。

ゆっくりと二人で階段を上っていく。

玄関に入るや否や、ショウヘイは私を抱きしめた。

どうやってリビングまでたどりついたのかわからない。

抱きしめられ、自分の唇をショウヘイの唇で何度も塞がれながら、そして私は時折ショウヘイの足を気遣いながら。

ソファーの上に押し倒された。

ソファーのきしむ音。ショウヘイが私の上に重なる。

二人とも冷たい雨で濡れたままなのに。

「ソファーが濡れちゃう。」

「いいさ、そんなの。」

「足、痛くないの?」

「どうだっていい。」

彼の唇が私の全身に雨のように降り注いだ。

彼の指先も手の平も唇も、全てが私をとろけさせた。

ずっとそうしてほしかった。

なのに、彼の腕の中で急に不安が訪れる。

このまま私達はどうなっていくの?

ショウヘイは、再婚するかもしれないのに。

どうして私を抱くの?

好き、だから?

抱きたい、から?

その先に、二人の幸せがあるの?


ショウヘイの動きが止まる。

「どうした?」

ショウヘイは汗ばんだ体を起こして私の顔をのぞき込んだ。

「え?」

「急にチサの表情が固まったから。」

「固まった?」

「今、何考えてる?」

ショウヘイは優しく私の前髪を掻き上げた。

言葉に詰まる。

こんな不安な気持ち伝えていいの?

重たくてくだらない人間だって思われそうだ。

「・・・言いたくない。」