翌朝。

ショウヘイはタクシーで、私は電車で出勤する。

人事部フロアに到着すると、朝来た社員から会議室に集められていた。

「松坂部長が今日で最後だからその挨拶と、新しい部長の挨拶があるみたいですよ。」

ミユキがすぐに私のそばに寄ってきて教えてくれた。

ショウヘイは、先に到着していたようだけど、まだデスクに座って机上の書類を眺めていた。

ミユキと会議室に向かう。

岩村課長が忙しく動いている。

前方には既に松坂部長と新しい部長が椅子に腰掛けていた。

岩村課長は私の姿を見つけるなり声をかけてきた。

「あ、村上さん、もう全員会議室に集まったかな。」

「あ、はい、いえ、見てきます!」

ショウヘイはまだデスクにいたよな。

他に残ってないか確認すべく、慌ててフロアに戻る。

フロアにはショウヘイだけがまだ椅子に座っていた。

「ちょっと、部長の挨拶が始まるから早く会議室にお願い。」

ショウヘイのそばに駆け寄ると事務口調で言った。

ショウヘイが私の方に顔を上げる。

「ああ。今行く。」

そう言うと、松葉杖を持って立ち上がった。

なんとなく疲れた横顔。

昨日、寝れたんだろうか。心なしか目の下に隈があるように見えた。

やっぱり、気まずいよね。元義父が部長だなんて。

何か思惑がありそうだし・・・。

ショウヘイと並んで会議室にゆっくりと歩いて行った。

会議室の扉を開けて、先にショウヘイに中に入ってもらう。

「ありがとう。」

ショウヘイは小さな声で言った。

岩村課長は私を見ると、オッケーサインをしてきた。

私もオッケーサインで返す。

「えー、では、皆が集まったところで、今日付けで退職される松坂部長よりお言葉を頂きます。」

岩村課長は松坂部長にマイクを渡した。