シャワーを浴びながら、気づいたら涙が頬を伝っていた。

誰かに恋して涙が出るなんて、初めてだ。

タカシに振られた時ですら流れなかった涙。

浮かばれないってわかってるのにどんどん惹かれていく自分を止める術がわからない。

気持ちの持っていく場所がない。

完全に私の気持ちは迷子状態。

嫌な奴なのに、時々ものすごく優しくて。

突き放したかと思えば、あんなに熱いキスをして抱きしめてくる。

やっぱり、ここに居候したのは間違いだったのかもしれない。

ショウヘイの足が完全に治るまでの2ヶ月なんて身が持たない。

私は完全に遊ばれてるよね。

マキが言ってたブイブイいわしていたっていう女性陣の中にしっかり組み込まれてしまった。

そんなくだらない男にはまる女にだけはなりたくなかったのに。

あふれる涙の上から強めのシャワーを当てた。


お風呂から出ると、ショウヘイはまだリビングのソファーに座ってテレビを観ていた。

暢気なもんだ。

私がこんなにも悩んでるっていうのに。

キッチンでお水をコップに入れて飲んだ。

「そういえば、明日松坂部長退職だな。」

テレビを観ながらショウヘイがぼそっと言った。

そうだった。

明日で最後だ。

そして、松坂部長の後任として、ショウヘイの元義父、河村部長が人事部長の椅子に座る。

ショウヘイの気持ちを推し量るにはまだ私はショウヘイのことをあまり知らなかった。

ただ、そう言ったショウヘイの背中が妙に緊張しているように見えた。

「大丈夫?」

思わずそんな背中に声をかけた。

「何が?」

禁句だったかな。

言ってから、軽はずみだったと反省する。

「別に。」

今日はあまりショウヘイと長々と会話をする元気がない。

「先に寝るね。」

お水を飲み干すと、私はそのまま部屋に戻った。