『・・・チサ?』

私がえらく大きな声で叫んだので、トモエは驚いている様子だった。

そりゃそうよね。

まさか、トモエの事情を私が知ってるなんて思いもしないだろうから。

「あ、ごめん、大きな声出しちゃって。さっきは電話に出れなくてごめんね。」

『いいのよ。忙しいかなぁなんて思いながらかけてみたの。』

「・・・トモエ、今どこにいるの?」

『え。今・・・』

「実はね、さっきトモエの自宅に電話したの。」

『お母さん、何か言ってた?』

「うん。少し聞いた。」

『そう。』

「今どこにいるんだろうってトモエのこと心配してたよ。今朝喧嘩したんだって?」

『もう!お母さんはそんなことまでしゃべったの?』

「とりあえず、無事なのね?近くにいるの?」

『チサ、今から会える?』

今から・・・。

部屋からリビングを覗くと、ショウヘイは既に食べ終えてソファーにもたれて寝ているようだった。

「うん、いいよ。実は私も家じゃないんだ。」

『家じゃないって、どこ?』

「市内にね。今ちょっと居候してるの。」

『まさかまさかのオーストリアの君じゃないでしょうね。』

トモエの勘はいつもするどい。

私のちょっとした声のトーンから色んな情報を察知する。

私も相変わらず嘘がつけない人間だわ。

思わず苦笑する。

『実は私も今市内にいるの。お取り込み中だったら申し訳ないけど、ちょっと話したいことがあるの。』

「お取り込み中なんて全然ないわ。行くわ。場所教えて。」

トモエは、市内のホテルのロビーにいるとのことだった。

わかったと言って電話を切った。

お腹がぐーっと鳴る。

やっぱりね、腹が減っては戦は出来ぬ。

キッチンに向かうと、寝ているショウヘイの後ろ姿を眺めながら、冷えたポークチャップを口の中にかき込んだ。