『チサちゃんにどこまで話していいのかわからないけれど、今朝ね、急にトモエが「海外協力青年隊に入りたい」って言いだしてね。』

「海外協力青年隊?」

『そうなの。何でも発展途上国で先生をしたいって。しかもボランティアでしょう?2年間、もしくはそれ以上そういう国の子供達に勉強を教えたいって。』

それは初耳だった。

『もう30でしょう?トモエだって結婚だって考えないといけないし、せっかく持ってる教員免許ももういらないって言うの。どうしたものかしら。困った子だわ。本当に。』

トモエのお母さんは深いため息をついた。

トモエ、そうだったんだ。

お見合いしてうまく行きそうだってあの時は思ったけど、帰り際の曇った目にはそんな思いが秘められていたんだね。

でも、急に海外協力青年隊だなんて、海外旅行中に何かあったのかしら?

「とりあえず、もう一度トモエに連絡取ってみます。また連絡とれたら電話入れます。」

『ごめんなさいね。よろしくお願いします。』

電話は切れた。

トモエ。

あなたって人は、やっぱりすごい人だわ。

そんなこと、今から決意するなんて、よほどの勇気。

トモエを変えたのは一体何?

私はもう一度トモエに電話をかけた。

呼び出し音が響く。

カチャ。

「トモエ!」

思わず叫んだ。