トモエに折り返す。

なかなか出ない。

一度切って、もう一度かけ直した。

でも、出なかった。

胸の奥がざわざわする。

30分も待たせすぎたかな。急ぎの電話だったのかもしれない。

すぐに折り返せばよかったことに、今更ながら後悔する。

どうしよう。

あ、そういえば、トモエの自宅にかけてみよう。

スマホから、トモエの自宅の電話番号を検索した。

あったあった。

随分前の電話番号だけど、確か変わってないはず!

呼び出し音が耳元で鳴っている。

しばらく鳴った後、誰かが受話器を取った。

『はい。』

「夜分にすみません。トモエさんと大学時代の同級生の村上チサです。ご無沙汰しています。トモエさんはいらっしゃいますか?」

『あら、チサちゃん?久しぶり、元気してる?』

トモエのお母さんは、私のことを覚えてくれていた。

『トモエなんだけど、今朝恥ずかしながら私と大喧嘩して出て行ってしまって。まだ帰ってきてないのよ。本当、どこにいっちゃったのかしら。30にもなって、家出みたいなことして何やってんだか・・・』

30にもなって、・・・って。年齢は関係ないわ。

私だって未だに母親や妹と小学生さながらの喧嘩するもの。心の中でつぶやいた。

じゃ、さっきのトモエからの電話は外からだったのね。

出ればよかった。軽くため息をついた。

「実は、30分ほど前にトモエから電話があったんです。でも私が取り込んでいてすぐに出れなくて。再度かけ直したんだけど出なくて心配になってご自宅にお電話したんです。」

『そうだったの。どこからチサちゃんにかけたのかしら。本当にごめんなさいね。』

「先日トモエに会った時には、随分体調も良くなったし、こないだ海外に一人旅に行ってきたって聞きました。元気そうだったし安心していたんですが。」

時計は20時を差していた。

以前よりも元気になったとはいえ心配だった。

何か悩んでいることがあるような気がしていた。

お母さんと大喧嘩って何やったんだろう。

『その海外旅行がくせ者でね。今朝の喧嘩もそれが発端なの。』

「海外旅行?」