合い鍵を手に握りしめながら、タクシーに揺られる。

ちょっとしたことで一喜一憂してる自分が不憫だ。

ショウヘイはどうしてこんなにも私を翻弄させるんだろう。

それはきっとショウヘイのせいじゃない。

私がショウヘイのことを好きだからだ。

たぶん、きっと。

自分にしっかりと言い聞かせる。

ショウヘイの家の前にタクシーが着いた。

松葉杖の使い方も少しずつうまくなってきているのか、ショウヘイは昨日よりもすばやくタクシーから降りた。

私もすぐ後に続く。

階段の前で、ショウヘイは表情を変えずに言った。

「申し訳ないけど、また君の肩貸してもらえる?」

「ええ。」

私はショウヘイの横に並んだ。

そっとショウヘイの腰に手を回す。

スーツの香り。

ショウヘイはあまりきついオーディコロンはつけていないようだったけど、かすかに清潔な甘い香りがした。

ショウヘイが私の肩を持つ手にぐっと力が入る。

一歩ずつ、ゆっくりと階段を上がっていった。

ショウヘイの片足になれることが純粋に嬉しい。

「ありがとう。」

ようやく2階までたどり着く。

足が片方使えないだけで、こんなにも人間は大変になるもの。

両方あるのが当たり前の生活では感じないことだった。

「開けるね。」

ショウヘイが自分のカギを探している間に、さっきもらった合い鍵で玄関の扉を開けた。

少しずつ、少しずつ、ショウヘイとの関係が縮まってる。

その縮まりが、どこまで縮まるのかがわからない。

本当にこれでいいのかもはっきりわからないままだった。