意外にもショウヘイの方から先に目線を逸らした。

「いや、ちょっと言ってみただけ。ごめん。スルーしといて。」

いつも強気でこちらを翻弄するショウヘイとは違っていた。

「いいよ。足が治るまでここにいてあげても。」

そんなショウヘイの姿に思わずそう返していた。

「え?」

ショウヘイが私の方に再び目線を上げた。

「さっきのは冗談だよなんて、今更言わないでよね。オーストリアでお世話になったし、あなたが不便な間はここで助けてあげる。」

自分の口が勝手に動いていた。

必死で自分の気持ちを押し殺しながら、精一杯の思いを乗せて。

「大丈夫?」

ショウヘイはゆっくりと私から体を起こした。

大丈夫?

・・・ん?

うちには何て言えばいいんだろう?

骨折してるショウヘイとしばらく同棲するって?

同棲。

同棲ではないか。

困ってる友人の介護。

いや、それも違う。

いずれにせよ、親を納得させるだけの理由が必要だった。

「松葉杖はいつ取れる予定なの?」

「医者には二ヶ月って言われてるけど、骨の状態によってはもっと早く取れるかもしれない。」

なんだか気持ちがふわふわしていた。

私、まじでここにいようとしてる?

ショウヘイとここで二人きりでしばらく住むの?

オーストリアの4日間とはわけが違う。

だけど、

だけど、やっぱりショウヘイのことほっとけない。

それに、ショウヘイから「ここにいてほしい」なんて言葉聞けると思わなかったんだもの。

例え、ショウヘイが結婚をしたいと思わなくったって、私のことそれほど好きでなくたって、私は今彼のそばにいたい。

いてもいいって言ってくれるなら、どんなことしたってそばにいたい。

「今から家に電話してみる。」

「おいおい、まじかよ。」

私よりもショウヘイの方が慌てているようだった。