自分も食べ終わると、すぐにお皿を洗って、キッチン周りを片づけた。

もうそろそろ帰ってもいいかしら。

時計を見ると23時になっていた。

「もうこんな時間だ。遅くまでごめん。一人で帰れる?」

ショウヘイは少し心配そうな顔で松葉杖を使って立ち上がった。

一人で帰れる?

もちろん帰れるわよ。もう30なんだし。

だけど、ショウヘイは、この後一人で大丈夫なの?

このままソファーで寝たとして、明日の朝のご飯の用意・・・、それから、またあの階段を一人で降りて行けるの?

一人では到底無理なような気がしていた。

「あなたこそ、この後大丈夫?」

後ろに束ねていた髪をほどきながら尋ねた。

「大丈夫だよ。なんとかなるだろ。今日はありがとう。送っていけなくてごめん。」

ショウヘイはそう言いながら、松葉杖を突いて私の方へ近づいてきた。

その時。

・・・私も迂闊だった。

足下に料理を運んだお盆がそのままになっていて、そのお盆の縁に松葉杖の先がひっかかりショウヘイがゆっくりと私の方へ倒れてきた。

「きゃっ。」

思わず叫ぶも、突然のことだったので私も体勢が悪くそのままショウヘイが私に覆い被さる状態で倒れ込んだ。

「いて。」

ショウヘイの痛みにゆがんだ顔が私のすぐ目の前にあった。

痛めた左足が倒れた瞬間床についてしまったようだった。

「澤村さん、足ついちゃった?大丈夫?」

「う、ん、なんとか・・・。村上さんこそ、大丈夫?」

ショウヘイの切れ長の目が私の目を正面から捕らえた。

あまりにも近いショウヘイの顔が、昨晩の甘いキスを連想させる。

こんな状況で不謹慎だと思いつつ、私の鼓動はますます激しくなっていった。

「だ、大丈夫じゃないです。」

思わずそう言っていた。

私の気持ちが破裂しそうだった。全然この状況、大丈夫じゃない。

キスしたい。

彼のそばにもっといたい。

ショウヘイは私の目を潤んだ瞳でじっと見つめ、静かに言った。

「俺の足が治るまで、ここにいてくれない?」

・・・。

え?

聞き間違い?今、何て言った?

私は大きく目を見開いてショウヘイの目を見つめ返した。