「ごめん!待った?」

テーブルにはまだ手を付けていないお弁当を置いたまま、スマホをいじっているマキに謝った。

スマホから顔を上げて私を見ると、マキはニヤッと笑った。

な、なんですか???

その不敵な笑み、いつも恐いんですけど。

「遅かったわね。会議か何かで長引いた?」

マキはお弁当の蓋を取りながら尋ねた。

私も持って来たお弁当を素早く広げる。

「ううん。会議ってわけじゃないけど。澤村さんが病院立ち寄りでまだ来てなくて、その事情説明を課長にしてた。」

「澤村?ははん。」

マキは私の顔を探るように笑いながら、お弁当の中に入っているミートボールを口に入れた。

「何?澤村、怪我したの?」

「うん。昨日自宅前で転倒して足首骨折したんだって。」

「へー。あんな何でもスマートにこなしそうな雰囲気なのに、意外と鈍くさいのね。」

鈍くさい?

どうしてマキにそんなことまで言われなきゃなんないのよ。

自宅前がどういう構造になっているとか、ショウヘイがその時どういう状態なのかなんて知らないくせに。

珍しく、マキにムッとした。

でも言い返せるわけもなく、ぐっと押し黙ってお弁当の卵焼きを口に放り込む。

ちらっとマキの方を見ると、マキも私をじっと見ていた。

「な、何?」

「いや、怒ったかな?と思って。」

「どうして怒らなきゃなんないわけ?」

「だってさ。怒ったような顔してんだもん。チサにしては珍しく。」

私は黙ったままお茶を飲んだ。

「大丈夫だよ。」

「本当に?もしさ、まじで澤村のこと好きになってんだったら教えてよ。とっておきの貴重な情報手に入れてるから。」

どんなけ澤村情報に通じてるんだ!

「好きじゃないよ。全然。」

なんとなくまだ言えない。

マキのとっておきの情報って奴がすごく気になりつつも、聞くのが恐い自分もいた。