私はタクシーを拾って近くのビジネスホテルに泊まった。
狭くて無機質な部屋に半分安堵し、もう半分はさみしさが募る。
明日からしばらく夜勤ばかり。
あの香取先生のせいだ。
私から彼だけじゃなく仕事も奪おうとしている。
ひどい、ひどすぎる。
直接正面から『彼と別れて』とどうして言ってこないの。
周りを巻き込んでじわじわと私の信用を奪うような真似をして。
それに彼は私を信じてくれなかった。
私じゃなくて私より長い付き合いだった元カノを信じた。
もうダメなんだろうな…。
彼は私より元カノを選んだ。
それは紛れもない事実。
ふと、洋兄ちゃんとの約束を思い出した。
『1人で泣かない。必ず洋兄ちゃんに連絡する』
洋兄ちゃん、ごめんね、今夜は1人で泣かせて。
今は洋兄ちゃんに会わせる顔がない。
なぜだか私の男性関係を洋兄ちゃんには話したくなかった。この状況を説明したくない。
号泣はしなかった。
でも、涙は止まらない。
結局のところ、私と彼って何だったのだろう。
自分に靡かない私を落としたかっただけだとは思いたくない。
それなりに大事にしてもらっていたはず。
ただ、それが続かなかっただけななか、最初からそんな気がなかった、元カノの代わりだったのか。
考えてもわからないんだから仕方ないのに、私の頭の中はぐるぐると回る。