私たちは楽屋を出て会場の席に着いた。
どうやら関係者席らしい。
そっと周りを見るとテレビで見たことがある俳優さんの姿もちらほらとあった。
「ね、私、場違いじゃないかな」
どうにも気後れしてしまい、洋ちゃんにそっと声をかけた。
洋ちゃんは今日もステキだ。その辺にいる俳優さんより数段かっこいい。
「志織は自信を持って。大丈夫。誰よりもキレイだよ」
私の耳元で囁いて頭のてっぺんに軽くキスをしてくれた。
久美さんが送ってきてくれた紺色を基調として白のレースをあしらった上品なワンピース。
洋ちゃんのおすすめもあって今日は髪もメイクも美容院にお願いした。
洋ちゃんの優しく甘い言葉ににまっとする。
あー、私って本当に単純。
私と洋ちゃんの両サイドの席はまだ誰も座っていない。
美人女優が洋ちゃんの隣に座ったらいやだなーと思っている間にコンサートが始まった。
すごい。
鳥肌がたった。
ピアノの音に引き込まれていく。
ピアノの演奏会が初めてだった私はとにかく夢中になっていた。
コンサートも終盤に入り、一生さんが立ち上がりマイクを手にした。
観客に挨拶すると
「本日は妻の亜佐美を皆さまに紹介します」
と木村さんを舞台に呼んだ。
ほとんどの観客は一生さんが既婚者だと知らない。
みなざわめき、若い女性の小さな悲鳴も聞こえる。
「皆さん、私が彼女と結婚したのは海外留学中でまだ学生の頃でした。
ピアニストとしてやっていけるのかどうか全くわからない時代です。
私たちが知り合ったのは更にもっと昔。私たちは幼なじみです。記憶の残る限り私は彼女と共に生きています。
私には彼女がいない人生など考えられません。
離れて暮らした日々もお互いの存在を感じられるだけで全てを乗り越える事ができました。
私にとって彼女はまさにもう1人の自分自身なのです。
彼女なしで今の自分はありません」
木村さんはずっと一生さんを見つめている。
一生さんは隣に立つ木村さんを優しく見つめてまた正面を向いた。
「私は結婚していた事を隠していたわけでははありません。結婚が20才だったことで独身だと思われていただけなのです。
でも、この度、私たち夫婦の間にに新しい命が芽生え、家族が増える事になりました。
この機会に支えて頂いている皆さまに妻を紹介する事にいたしました。
どうぞこれからも私たちを応援して頂きたく思います」
パチパチと拍手が広がり、声援も聞こえる。
2人は長いこと頭を下げていた。
私は感動で少しうるうるとして舞台の2人に見とれていた。
そこにスタッフさんに声をかけられて、我に返った。
そうだ、大仕事がある!
私と洋ちゃんは花束を持って舞台に上がる。
「木村さん、おめでとうございます」
片手で持てないほどの大きな花束を木村さんに渡す。
「藤野!私、聞いてないわよ」
木村さんはチラッと一生さんを見た。
一生さんは笑っている。
「うん、亜佐美には秘密で藤野さんと池田先生にお願いしたんだ」
洋ちゃんは持っていたもう1つの花束を私に差し出し、私はそれを一生さんに渡した。
「一生さん、おめでとうございます」
観客からの拍手が大きくなる。
木村さんの瞳が濡れている。
私と洋ちゃんはそっと舞台を降りて席に戻った。
どうやら関係者席らしい。
そっと周りを見るとテレビで見たことがある俳優さんの姿もちらほらとあった。
「ね、私、場違いじゃないかな」
どうにも気後れしてしまい、洋ちゃんにそっと声をかけた。
洋ちゃんは今日もステキだ。その辺にいる俳優さんより数段かっこいい。
「志織は自信を持って。大丈夫。誰よりもキレイだよ」
私の耳元で囁いて頭のてっぺんに軽くキスをしてくれた。
久美さんが送ってきてくれた紺色を基調として白のレースをあしらった上品なワンピース。
洋ちゃんのおすすめもあって今日は髪もメイクも美容院にお願いした。
洋ちゃんの優しく甘い言葉ににまっとする。
あー、私って本当に単純。
私と洋ちゃんの両サイドの席はまだ誰も座っていない。
美人女優が洋ちゃんの隣に座ったらいやだなーと思っている間にコンサートが始まった。
すごい。
鳥肌がたった。
ピアノの音に引き込まれていく。
ピアノの演奏会が初めてだった私はとにかく夢中になっていた。
コンサートも終盤に入り、一生さんが立ち上がりマイクを手にした。
観客に挨拶すると
「本日は妻の亜佐美を皆さまに紹介します」
と木村さんを舞台に呼んだ。
ほとんどの観客は一生さんが既婚者だと知らない。
みなざわめき、若い女性の小さな悲鳴も聞こえる。
「皆さん、私が彼女と結婚したのは海外留学中でまだ学生の頃でした。
ピアニストとしてやっていけるのかどうか全くわからない時代です。
私たちが知り合ったのは更にもっと昔。私たちは幼なじみです。記憶の残る限り私は彼女と共に生きています。
私には彼女がいない人生など考えられません。
離れて暮らした日々もお互いの存在を感じられるだけで全てを乗り越える事ができました。
私にとって彼女はまさにもう1人の自分自身なのです。
彼女なしで今の自分はありません」
木村さんはずっと一生さんを見つめている。
一生さんは隣に立つ木村さんを優しく見つめてまた正面を向いた。
「私は結婚していた事を隠していたわけでははありません。結婚が20才だったことで独身だと思われていただけなのです。
でも、この度、私たち夫婦の間にに新しい命が芽生え、家族が増える事になりました。
この機会に支えて頂いている皆さまに妻を紹介する事にいたしました。
どうぞこれからも私たちを応援して頂きたく思います」
パチパチと拍手が広がり、声援も聞こえる。
2人は長いこと頭を下げていた。
私は感動で少しうるうるとして舞台の2人に見とれていた。
そこにスタッフさんに声をかけられて、我に返った。
そうだ、大仕事がある!
私と洋ちゃんは花束を持って舞台に上がる。
「木村さん、おめでとうございます」
片手で持てないほどの大きな花束を木村さんに渡す。
「藤野!私、聞いてないわよ」
木村さんはチラッと一生さんを見た。
一生さんは笑っている。
「うん、亜佐美には秘密で藤野さんと池田先生にお願いしたんだ」
洋ちゃんは持っていたもう1つの花束を私に差し出し、私はそれを一生さんに渡した。
「一生さん、おめでとうございます」
観客からの拍手が大きくなる。
木村さんの瞳が濡れている。
私と洋ちゃんはそっと舞台を降りて席に戻った。