すごいよね、若葉って。


初対面で、しかも妙になれなれしく話しかけてくる人にもちゃんと笑顔で対応できるなんて。


ふぅ、と息を少しだけ漏らした直後、私と同じ速度で歩いていた磐波さんが私の肩と叩いた。


トントン。


「……はい?」


「こんなこと言うの失礼かもしれないけど、こういう経験したことないでしょ」


初対面の人にそんなことを言われたのはひさしぶりだ。


「え? あ……まぁ、はい……」


とりあえず曖昧な答えを出す。


すると磐波さんが急に悲しそうな顔を見せた。


「あの子……朝丘若葉だっけ? 君のクラスメイトとかって言ってたよね?」


「……はい」


「彼女って、学校でもこんな感じなの?」


彼の言葉に気になる単語があった。


『学校でも』?


そうですよ、と言おうと思ったが、なぜかそう言うのをためらってしまう。


私のこの反応がなにかを意味するものだととらえたのか、磐波さんはさっと表情を曇らせた。


彼の表情に首をかしげるしかない。