「え……?」


今、なんか意味深な言葉が聞こえた気がする。


思わず聞き返してしまうほどの言葉だったから、それはしょうがないかもしれないけど。


『抹里にならいくら傷つけられてもかまわない』


それって……まさか、?


私たちはいとこ同士だから、いとこ以上の関係にはならない。なってはいけない。


学校の先生に恋をするのと同じくらい、いけないことだ。


首をブンブンと左右に振りながらもうひとりの自分に言い聞かせる。


危ない、危ない。


心の中の私が危険信号を出さなかったら、踏み込んではいけない場所に入ってしまいそうだった。


必死に言い聞かせている間に、悠くんが慌てたような早口でしゃべった。


『なんでもない! と、とにかく、こんなに早い時間に電話かけてごめんな。抹里が事件に巻き込まれないことを祈ってるから!』


「ありがとう……」


『……っ、じゃあな』


ひと息ついてから電話を切った悠くんにまた疑問を感じながらも終了ボタンをタップして通話モードを終わらせた。


『抹里にいくら傷つけられてもかまわない』


この言葉、なんか引っかかる。


いつもの悠くんらしくない。


いつもの悠くんなら元気よく『じゃあな!』と言ってくれるはずなのに、なんでひと息ついてから言ったんだろう。


首をかしげても答えは見つからなくて、私はスマホをポケットに入れてテレビをつけた。