そんなこと言われても。


合わせる顔がない私に向かってそう言ったって、私の心はちっとも揺れ動かない。


それなのに、悠くんは楽しそうに私に話しかけてくる。


『やっぱ俺、抹里だけなんだよな。本心をうちあけて話せる相手なら簡単に探せるだろうけど、趣味が合うやつがいなくてさ。身近にいるやつほど頼りになるってよく聞くけど本当のことだったんだな』


本心をうちあけて話せる相手、か。


悠くんにとってその相手は私なんだ。


なんか意外だ。


大学で気の合う友達がいっぱいできているイメージがあったけど、もしかして友達いないのかな。


でも、悠くんには明るいオーラしかないから友達は絶対いそうだよね。


いくら友達がいっぱいいても悠くんが心を開いて話すことができる相手が私だけなのは意外だった。


私は……どうだろう。


褒めてくれる仲間はいるけど、その仲間は悠くんの言う“本心をうちあけて話せる相手”には該当しない。


じゃあ、私にとって本心をうちあけて話せる相手っていったい誰なんだろう。


そう思ったところではっと気づいた。


そうだ。今までクラスメイトに囲まれて話しかけられたことはあったけど、誰に対しても本当のことを言わなかった気がする。


同じグループのメンバーの秋帆やネネ、えるにいっちゃん。


そして、親友の由良にも。